「災害級」の暑さの影響で、夏休み中の小学校のプールの使用が中止となる異例の事態が広がっている。猛暑のためプールサイドや水の温度が上がり、涼を取るどころか、子どもたちが熱中症になる恐れがあるからだ。命に関わる問題でもあり、専門家は「プールを開く場合も、水分補給などが不可欠」と呼びかける。
26日午後、東京・多摩地区の調布市立第一小に子どもの姿はほとんどなかった。いつもなら児童向けの水泳指導があり、一日200人以上が来るはずだったが、猛暑を受けてプールは使用中止になった。
曇り空だったこの日も、プールの水温は30度。プールの安全管理を啓発する「公益社団法人日本プールアメニティ協会」(東京都)が遊泳に適した水温として示す26~31度のギリギリ範囲内だが、晴れれば水温が上がり、水面に直射日光が照りつける。
富岡雅裕校長は「静かで少し寂しい夏になるが、この異常な暑さではやむをえない。子どもの安全が一番だ」と話す。同市では室内プールがある1校を除く19の市立小学校で夏休み中の水泳教室やプール開放の中止が決まっている。
愛知県安城市教委も24日、各小中学校に学校でのプール開放の中止を通知した。担当者は「昨今の暑さを見ていて危険と判断した。各校で判断が分かれるよりは一斉に中止した方がいい」。24~27日の開放を中止し、来週以降は気温や環境省の暑さ指数を見て判断するという。
地域単位ではなく、個別の学校で判断する動きもある。長野市の市立朝陽小では、26日から8回予定していた夏休みのプール開放を取りやめた。この夏、テントを張ったプールサイドが40度を超える日もあった。吉沢修一校長は「異常な暑さを災害と受け止めた」と話す。
東京都港区立東町小は23日から27日まで5日間を予定していた水泳指導をやめた。先週末に保護者にメールで伝え、「緊急情報」としてホームページにも掲載した。屋上にプールがある港区立麻布小や御成門小なども中止にした。各校とも「暑さでのプールの中止は経験がない」という。
文部科学省が2014年に作った「水泳指導の手引(三訂版)」によれば、望ましい水温を「23度以上」と下限の目安は示すが、上限はない。担当者は「水温が上がり熱中症になることは想定外の事態。プールの使用については水温や気温を考慮し、各学校や教委が適切に判断して欲しい」と話す。
熱中症に詳しい兵庫医科大の服部益治・特別招聘(しょうへい)教授は「今年の暑さは異常で屋外プールの使用中止はやむをえない。直射日光があたる上に、水の中にいるために汗をかいても気づきにくく、脱水症状や熱中症につながる危険がある。プール教室を開く場合にも、こまめな水分補給などの対策が不可欠だ」と話す。(土居新平、河崎優子、峯俊一平)