トランプ米大統領は30日、イランの核開発をめぐって対立する同国のロハニ大統領と前提条件なしで会談する意欲を示した。8月7日に米国がイランに対する経済制裁を再開させるのを前に、イランを揺さぶる狙いとみられる。イランでは反米を基調とする保守強硬派が勢いを増しており、対外融和を掲げる保守穏健派のロハニ師は厳しいかじ取りを迫られている。
トランプ氏は30日、ホワイトハウスで会見し、ロハニ師について「私は誰とでも会う。彼らが望むなら、いつでも好きな時にだ」と述べたうえで、「条件はつけない」と強調した。
ただし、「彼らに(会談の)準備ができているかは分からない。今は大変な時だろう」とも指摘した。保守強硬派と保守穏健派の対立が深まるイランの国内事情を見透かし、イランの核開発をめぐる交渉を米国有利に進め、11月の米中間選挙を前に政治的成果を得たい思惑も透ける。
トランプ政権は5月、米英仏中ロ独がイランと2015年に結んだ核合意について、イランの核開発規制に期限があるなど「致命的な欠陥がある」として離脱。90日と180日の猶予期間を経て、全ての制裁を再開させると表明した。
最初の制裁再開は8月7日の予定で、イランの自動車関連企業との取引やイラン政府による米ドル取得などが対象。制裁で経済が大打撃を受ける恐れから、イランはすでに物価高になっており、6月には首都テヘランで物価高に抗議するデモも相次いだ。国会では保守強硬派の議員がロハニ師の経済運営に反発し、ロハニ師は中央銀行総裁の更迭に追い込まれた。
イラン政府の外郭団体の統計によると、核開発疑惑で欧米から制裁を受けた11年から12年にかけて、イランの自動車生産台数は4割以上落ち込んだという。
11月初旬には、イランの輸出の3分の2を占める原油を対象にする制裁も再開される。この制裁が実施されれば、イラン経済はさらに苦境に追い込まれるのは避けられない。
しかし、ロハニ師がトランプ氏との会談に応じるには、ハードルが高いとみられる。会談に応じれば、国政の最終決定権を握る最高指導者ハメネイ師の影響下にある保守強硬派から「米国に屈した」と非難されるのは必至で、政権基盤も揺らぎかねない。そのため、ロハニ師はトランプ氏に対し、対決姿勢を示さなければならないとみられる。(テヘラン=杉崎慎弥、ワシントン=香取啓介)