鹿児島大病院(鹿児島市)は3日、入院患者15人から抗生物質がほとんど効かない多剤耐性の細菌アシネトバクターや類似の菌が検出され、8人が死亡したと発表した。集中治療室を中心に院内感染した疑いがあるという。
アシネトバクターは通常無害 抵抗力弱った患者で重症化
記者会見した夏越祥次病院長は「亡くなられた患者さまには心よりご冥福を祈るとともに、深くおわび申し上げる」と謝罪した。
同大病院によると、昨年4月から今年4月にかけて、同院に入院していた患者5人から多剤耐性アシネトバクターが検出され、このうち3人が死亡した。多剤耐性ではない菌の感染者も2016年9月から今年2月にかけて10人見つかり、うち5人が死亡した。
病院は、亡くなった8人のうち、3人は病状の進行に影響を与えた可能性があるとした。
感染した15人のうち14人が集中治療室に入ったことがあるため、集中治療室でそれぞれ感染した可能性が高いとみられている。また、手洗い場や床ずれ予防用マットレスからも耐性菌が見つかったという。
今年4月に多剤耐性アシネトバクターが検出された後、集中治療室などの消毒を実施。菌は現在は見つかっていないという。
アシネトバクターはどこにでもいる毒性の弱い菌。健康な人には無害だが、高齢者や病気で抵抗力の弱った患者に感染すると重症化することがある。さらに耐性菌は抗生剤が効きにくいため、症状を和らげる対症療法しかできなくなる。
アシネトバクターによる院内感染は、08~09年に福岡大病院で26人が感染して4人が死亡したほか、09~10年に帝京大病院(東京都)で60人が感染して35人が死亡した例がある。