(6日、高校野球 大阪桐蔭3―1作新学院)
甲子園の全試合をライブ中継 バーチャル高校野球
夏の甲子園、歴代最高の試合は? 投票ベストゲーム
先輩の2人の投手よりも栃木大会で多くのイニングを投げた作新学院の2年生・林に、甲子園で出番が回ってきたのは八回だった。先発高山、2番手佐取と3年生がつなぎ、優勝候補筆頭の大阪桐蔭に0―1と食らいついていた。
「自分がここで抑えれば、いい流れで九回の攻撃につなげられる」。2人の3年生に「あとは頼むぞ」と送り出された背番号11の林は、そんな思いでマウンドに向かった。
大阪桐蔭を押す大声援は気にならなかった。「マウンドに登れば自分だけの世界に入れる」。3年生がずらり並ぶ相手の強打線に対しても、気後れは感じなかった。「いつも関東の強豪チーム相手に投げていますから」
球は走っていて調子は良かった。だが慎重になりすぎて、先頭の1番宮崎に四球を与えた。2死二塁となり、打席には4番藤原。初球はカーブ。そして2球目もカーブを選択した。「ひざ元にうまく落ちればセカンドゴロに打ち取れたと思う。でも甘く入ってしまった」。一、二塁間を鋭く抜ける当たりは右前適時打に。味方の失策も絡み、一気に藤原も本塁にかえってきた。0―3。「先輩たちに申し訳ない」と林はうなだれた。
2年前の夏、中学3年だった林は、作新学院の全国制覇を見て、子どもの頃から憧れていたこの学校への入学を決めた。「伝統校で甲子園に出たかった」。夢はかなったが、100回大会を勝ち上がることは出来なかった。「伝統校として記念の大会で勝てず、先輩たちに申し訳ないです」
自分にはあと1年ある。最速140キロの真っすぐは「あと5キロは速くしたい」。この日打たれた変化球は「もっともっと磨きをかけたい」。新チームでは当然、背番号1を狙う。「一皮も二皮もむけて、まずは選抜大会を目指したい」。その後、もちろん夏にも帰ってくる。
「101回からまた自分たちが伝統をつくる」と林は力強く言った。(平井隆介)
●小針監督(作) 「投手陣はよく投げたし、最後まで勝つ気持ちでやってくれた。あと1点、あと1球の重みというか、遠さを感じた試合だった」
●高山(作) 先発し、2回1失点。「監督からは『いけるところまでいくぞ』と言われました。無失点で次につなげなかった。悔しい」
●佐取(作) 三回から登板し、5イニングを無失点。「全く緊張しなかった。気持ちのこもった投球ができたし、緩急をうまく使えた」