甲子園観戦記・マキタスポーツさん
「力以上のもの出せた」明石商、最大6点差追いつく粘り
甲子園の全試合をライブ中継 バーチャル高校野球
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うわっ、満員だ。38年ぶりの一塁側アルプス席。あのときとは、大違い。地元の明石商、すごい盛り上がりですね。
初めてここに来たのは、小学生のころ。おやじと僕の母校、日川(山梨)が第62回大会で南宇和(愛媛)に0―10でぼろ負けした試合でした。かち割り氷と大泣きする選手しか覚えてません。暗かったなあ。
高校野球にのめり込んだきっかけは、テレビで見た61回大会、箕島(和歌山)―星稜(石川)の延長十八回。試合が終わっても興奮が冷めなくて、近くの神社に素振りしに行ったほど。使ったバットは実家のスポーツ用品店の売り物だったけど。
そのころから芸能界志向が強かったんです。野球は競争率が高いから早々に諦めました。好きだったお笑いと音楽で飯を食っていきたかった。その二つを融合させて、音ネタ芸人になりました。
6点を追う四回、明石商の応援曲は「サンバ・デ・ジャネイロ」。やばいやばい。歓声が渦巻いてきた。ちょっと、実験。スマホのアプリでテンポを測ってみよう。どんどん速くなっていく。おおっ、4得点。アルプス席がつくる空気に呼応したみたい。音楽には人を動かす力があると思っています。
俳優、お笑い芸人、ミュージシャン、色々なジャンルに挑戦してきました。野球で言えば、社会人野球を題材にしたドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」にも出演しました。ただの野球好きのおっさん役でしたけど。
仕事のなかで一番面白いのは、自分自身のライブです。始まったら後にひけない。失敗することもある。でも、その体験でしか学べないことはたくさんある。あと、お客さんと一緒に雰囲気をつくるワクワク感も。アルプス席と選手の関係と似ていますね。
同点で延長戦へ。なかなか始まりませんね。これが今年からできた給水タイムですか。酷暑のなかで開催される高校野球では、この休憩時間はちょっとした進歩。ならば、今後の変化も期待できそう。
例えば、2会場にしてドームも使い、休みを増やしてみては? 甲子園はシンボリックな場所だけど、高校野球の魅力の全てではないと思う。ドラマチックな展開や選手のひたむきさといったコンテンツで、十分なオーディエンス(観客)を集められると思う。
十回、八戸学院光星が競り勝ちました。球場は満員のまま。明石商の選手もスタンドの応援も最後まで諦めないから、目が離せなかった。このライブ感、うらやましいな。(構成・小俣勇貴)
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まきたすぽーつ 1970年、山梨県出身。48歳。本名は槙田雄司。ミュージシャン、俳優、芸人など、マルチに活躍。2012年公開の映画「苦役列車」の演技で、第55回ブルーリボン賞新人賞を受賞。