奈良県は2019年、県内の著名な寺や神社が所蔵する仏像などの貴重な宝物を、パリとロンドンに「出張」させる。自治体が地元のお宝をまとまった形で海外に運んで展覧会を催すのは異例だ。20年の東京五輪を前に奈良への関心を高め、海外からの観光客の誘致につなげたいとする県側の思惑もにじむ。
奈良県は16年、県内の貴重な文化財を世界に向けて発信しようと、海外仏像展の企画委員会を設置した。仏教彫刻が専門の根立研介(ねだちけんすけ)・京都大大学院教授を学芸政策顧問に迎え、今年初めには文化庁や東大寺、興福寺なども加わった「奈良の仏像海外展示推進協議会」も組織し、具体策を練ってきた。
県によれば、フランスでは日仏友好160周年の今年、日本文化を紹介する「ジャポニスム2018:響き合う魂」の開催に合わせ、県が公式企画として「仏像展示 古都奈良の祈り」(奈良県・国立ギメ東洋美術館主催、日本経済新聞社など特別協力)を19年1月23日~3月18日、パリのギメ東洋美術館で開く。一方、英国では「奈良―信仰と再興」(奈良県・大英博物館主催、朝日新聞社など特別協力)が19年10月3日~11月24日、大英博物館で催される。
パリ展では、奈良時代に創建された興福寺で大切に守り伝えられてきた至宝のうち、鎌倉時代の著名な仏師の一派「慶派(けいは)」の手によるとみられる木造金剛力士立像(こんごうりきしりゅうぞう)の阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)(国宝)など仏像3体が紹介される。ロンドン展では、飛鳥時代後半の白鳳(はくほう)文化を代表する法隆寺の銅造(どうぞう)観音菩薩立像・夢違(ゆめちがい)観音(国宝)など約20点を展示。奈良を代表する寺院の仏像とともに、春日大社や丹生川上(にうかわかみ)神社の名宝などを通じて、東西文化の交流の役割を果たしたシルクロードの終着点として日本文化の基礎を築いた古都・奈良の奥深い魅力を紹介する試みだ。
■観光伸び悩み、文化財…