トヨタ自動車は中国・天津工場に、電気自動車(EV)などの「新エネルギー車」を年12万台生産する新ラインをつくる。広州工場でも同様の増強をする方向で、トヨタの中国生産能力は2割増になる見通しだ。新エネ車の生産・輸入を2019年から義務づける中国政府の新規制に対応しつつ、世界最大市場での追い上げをねらう。
天津工場は、現地大手・第一汽車との合弁工場(生産能力51万台)。約280億円を投じ、新たにEV1万台、プラグインハイブリッド車(PHV)11万台を生産できるようにする。さらに、広州汽車と合弁する広州工場(生産能力50万台)でも設備増強を進める。両工場の増強が同じ程度ならば、中国での生産能力はいまより2割増の140万台になる。
背景には成長市場を取り込めていないことへの焦りがある。中国は年3千万台近い自動車が売れる世界最大市場だが、トヨタは現地進出の遅れが響き、17年の販売台数は129万台。400万台を超える独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズ(GM)といったライバルに差をつけられている。
トヨタの豊田章男社長は5月、中国の李克強(リーコーチアン)首相が北海道のトヨタ工場を訪れた際に「世界で一番速く成長している中国に一生懸命ついていきたい」と発言。直後には、中国戦略を重視した組織再編を発表した。8月に入り、グループ各社にも「総力を挙げて数を増やす」と、中国生産拡大に向けた方針が伝えられた。
トヨタは20年代前半に、現地生産をいまの約2倍にあたる200万台規模に拡大する検討も進めている。(初見翔、山本知弘)