漫画などの海賊版サイト対策のあり方を議論している政府の検討会議で24日、特定のサイトを見ることができないようにするため政府が打ち出したサイトブロッキング(接続遮断)について、総務省の職員が「ネット社会のあり方が監視の方向に進む」と否定的な発言をした。これに対し、一部の第三者委員が反発。会議を主催する事務局が「政府一丸となって対策をまとめたい」と弁明に追われた。
政府は4月に「漫画村」など海賊版3サイトを名指しし、接続遮断を容認する方針を表明した。遮断するためにはネットの利用者がどんなサイトを見ているのかすべてチェックする必要があるため、憲法で定められた通信の秘密を侵害するという意見がある。一方で、遮断以外に有効な対策はないとして立法化を目指す意見もあって激しく対立しており、検討会議の議論の行方に注目が集まっている。
24日に開かれた政府の知的財産戦略本部の検討会議の5回目の会合には、出版社やインターネット接続業者(プロバイダー)、弁護士などで構成される第三者委員のほか、総務省や文化庁、経済産業省、法務省、警察庁の担当者も参加した。
この際、総務省でネット利用者の利益の保護などを担当する消費者行政第二課の職員が、インターネットを安心して使えるのは、通信の秘密に基づいてプロバイダーが利用者の情報を悪用しないという信頼があるからだと説明。その上で接続遮断について、「プロバイダーの役割が、ユーザーを守る立場から利用を監視する役割に変わる」と指摘。さらに、「今後のネット社会のあり方として、監視の方向に進むのか、自由なネット社会を目指すのかということ」と続けた。
これに対し、委員を務める林いづみ弁護士が「あぜんとした」と反発。「政府の一員としての総務省が、そのような次元の対立軸をいまさら立てることに非常に奇異な感を持った。今後、政府の一員として、より前向きに関わっていただきたい」と批判した。
この時点で会議の終了予定時刻を過ぎていたため、内閣府の住田孝之・知的財産戦略推進事務局長が「発言の適切性については私も若干、気になったが、政府一丸となって総合的な対策をとりまとめていきたい」と取りなして閉会した。
事務局はこの日の会合で、「接続遮断はただちに違憲となるとは限らない」と説明。行政による不適切な接続遮断を防ぐために、裁判所に申し立てるなどの司法手続きを利用した遮断手法を示した。