明治の廃城令(1873年)で取り壊された尼崎城の天守が145年ぶりに、兵庫県尼崎市の阪神尼崎駅近くに姿を現しつつある。鉄筋コンクリート造りで再建され、高さは石垣部分を含めて約24メートル。10月に完成し、来年3月29日に内部の一般公開が始まる予定だ。
尼崎城は江戸時代初めに築かれた尼崎藩主の居城。4層の天守は廃城令で跡形もなく撤去された。尼崎市は工業都市化が進み、城下町の面影はほとんど失われたが、3年前に旧ミドリ電化(エディオングループと合併)創業者の安保詮(あぼあきら)氏(85)が「創業の地に恩返ししたい」と私費で新天守を建てる意向を表明。阪神尼崎駅近くの城址(じょうし)公園で工事を進めてきた。
市によると、安保氏が投じる建設費は十数億円にのぼる見通し。新天守は、江戸時代の図面をもとに大きさや外観を忠実に再現しているが、位置や向きは土地の事情に合わせて変更されている。完成後は市へ寄贈され、歴史館として利用される予定だ。
再建に合わせて市が昨年から寄付を募り、今月17日時点で市内外の個人・団体から約1億4463万円(うち約459万円はふるさと納税)が寄せられた。天守の内装や展示内容の充実に充てる。(宮武努)