北九州市立医療センターの医師が、男性患者(当時60代)のコンピューター断層撮影(CT)の画像診断報告書を確認せずに肺がんの疑いを見落とし、患者が約1年半後に死亡したと、市が30日に公表した。市は遺族に2千万円の慰謝料を支払い和解する方針。市議会9月定例会に関連議案を提出する。
市によると、男性は2015年4月に糖尿病の治療のため受診。X線撮影で肺に腫瘤(しゅりゅう)影らしきものが確認され、さらにCT検査を受けた。放射線科の医師は「肺がんの疑いがある」として詳しい検査を求めるよう報告書に記入したが、主治医は見ていなかった。
男性は病状が悪化し、16年3月に再びCT検査を受け右肺の腫瘤がわかった。主治医は15年の画像も確認し、ミスを認め男性に謝罪した。男性は16年10月に肺がんで死亡。遺族が市に損害賠償を求めていた。
主治医は「糖尿病が良くなっていて、報告書の確認を失念した」と説明しているという。既にセンターを退職し別の病院に移っている。(井石栄司)