住宅以外の使用を禁じる管理規約があるマンションの部屋を、障害者のグループホーム(GH)に使うことはできるのか。この点が争われる裁判が大阪地裁で始まり、8日に第1回口頭弁論があった。「GHは事業」と使用禁止を求める管理組合に対し、GHを運営する社会福祉法人は「GHは共同生活を営む住居」と主張している。
訴状や社会福祉法人によると、マンションは大阪市内にある15階建ての分譲タイプ(住戸約250室)。法人は2室(3LDK)を借り、2009年以降、知的障害のある40~60代の女性6人が支援を受けながら暮らしてきた。6人は住民票も置いているという。
管理組合は16年6月、「管理規約に反する」として、部屋をGHとして使わないよう法人に要請。同11月にはGHへの使用禁止が管理規約に盛り込まれた。その後の民事調停も不調に終わり、組合は今年6月、法人に使用禁止と違約金約85万円を求めて提訴した。
法人は「障害者と地域の共生を妨げる」とし、障害者差別解消法に反するとも主張。一方、組合の代理人弁護士は「障害者の排除が目的ではない。営利・非営利問わず、法人が入居者を募って事業を行うことが問題」としている。
全国で3割、大阪で7割が共同住宅内
GHは障害者総合支援法に基づき、障害者が食事や入浴など日常生活の支援を受け、共同生活を送っている。このGHもスタッフが寝泊まりし、入居者は日中は作業所で働き、夕方に帰宅する。休日は地域の美容院に行き、誕生日にみんなでカラオケに行くこともある。
厚生労働省の事業に基づく日本グループホーム学会の調査(2012年度)では、全国のGHの約3割がマンションなどの共同住宅にあった。14年の大阪府・市の調査では、府内のGH1245戸のうち839戸(67・4%)が共同住宅内だった。都市部では共同住宅内のGHは多く、各地で同様のトラブルがあると指摘する専門家もいる。
立命館大学生存学研究センターの長瀬修教授(障害学)は、国の障害者施策が「施設から地域へ」を目指している点を踏まえ、「共同住宅の住人とGHが建設的に対話できる環境づくりを、行政は進めるべきだ」と話す。(大貫聡子、山田佳奈)