北海道の地震に伴う停電は、大規模化が進む酪農地帯を直撃した。出荷先の乳業工場が操業を停止した影響で、牛乳の原料となる生乳を捨てる牧場が少なくない。北海道は生乳の生産量が全国の半分以上を占める。本州以南の小売店で牛乳が一時的に品薄になるといった影響も出ている。
停電で乳牛がピンチ、農協職員が夜中まで「巡回搾乳」
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北海道で震度7、道内の被害状況は
十勝平野の西端に位置する新得町。乳牛約900頭を抱え、道内有数の規模の友夢(ゆうむ)牧場では、停電が続くなか、非常用の発電機を使って1日2回の搾乳作業を続けている。
乳牛は毎日2回の乳搾りをしないと体調が悪くなってしまう。乳を垂れ流しにしていると、ばい菌が入って炎症を起こす恐れがある。出荷のめどが立たなくても搾乳は止められない。朝と夕、それぞれ約5時間かけて、ライナーと呼ばれる吸引器を牛の乳頭に取り付けていく。だが、搾った生乳は廃棄している。出荷先の乳業メーカーの工場が停電で操業を停止しているからだ。代表の植田昌仁さん(49)は「もう2日分も投げた(廃棄した)」とぼやく。1日の生産量は約26トン。2日間で500万円超の損失が出た計算だ。
すべて手作業で数十頭の搾乳をするのは現実的ではない。機械を動かす電気が欠かせないが、JA新得町によると地元の酪農家35軒のうち発電機を持つのは7軒だけ。業者からレンタルしたり、農家が使わない時間帯に借りたりして確保した発電機を夜間に順番に使い、全35軒が最低でも1日1回は搾乳をしているが、生乳は廃棄している。「こんな体験は初めて。早く正常化してほしい」とJAの担当者は話す。
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