鹿児島県は14日、県内全43市町村あてに8月、出生届の受理と母子健康手帳を交付する際、知事のメッセージカードを配布するよう文書で求めていたことを明らかにした。カード作成の際の元になる文書案として、三反園訓知事の顔写真付きの過去の寄稿文を添付していた。7市町が拒否し、「意図がわからない」との疑問の声も上がっている。
県は記者会見で「事務方が進めたことで知事は知らなかった」と説明した。県によると、子ども家庭課が係長名で8月31日付で、「『知事のメッセージ入りカード』の配布について(依頼)」と題した4枚の文書をメール送信した。
文書ではカードの文面について、三反園知事がNPO法人に寄稿した文を元に作成する、と明記。寄稿文は「私たちも(略)子育て世代にとって住みやすい鹿児島となるよう(略)全力で取り組んでまいります」などと語る内容だった。県の公式ホームページのURLも載っていた。
「調査票」も添付し、配布依頼への可否を期限までに回答するよう要請。不可の場合は「理由」を記載させる欄もあった。7市町が「不可」と答えたという。
県は「子育て支援策の一環としてやったものだ。配布が、確定事項だと誤解を与えたとすれば配慮が足りなかった」と説明した。(野崎智也、井東礁)
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〈神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)の話〉 知事の政治的な姿勢がメッセージとして書かれており、写真が付くことでその色彩が強くなっている。市町村は県の下請けではないのに、回答期限を設け、配布ができない場合に理由まで書かせるのは限りなく強制に近い。選挙活動の一歩手前の政治活動に相当するのではないか。県の行政活動としての枠を超えている。