半導体専業メーカーとして東芝から6月に独立した東芝メモリが、米IT大手とデータ記憶装置の共同開発を強化する。議決権の5割弱を握る筆頭株主の米投資ファンド、ベインキャピタルの日本代表で、東芝メモリの取締役も兼ねる杉本勇次氏が朝日新聞のインタビューで明らかにした。東芝メモリの独立後の成長戦略が具体的に示されるのは初めて。
東芝メモリは主力の半導体「NAND(ナンド)型フラッシュメモリー」を組み込んだ記憶装置「SSD」もつくっている。自前でデータセンターを建設するグーグルやフェイスブックといった米IT大手はSSDの重要な顧客だ。杉本氏は企業名を伏せつつも、米IT大手とSSDの共同開発を始めていると明かし、「積極的に手がけるのが重要。(ベインが)お手伝いもできる」と述べた。ベインの国際的な情報網を生かし、営業戦略の立案や人材のスカウトも支援する考えも示した。
顧客との共同開発には、データの処理速度や耐久性などの仕様を買い手の要望に細かく合わせることができ、量産品のメモリーより高値で売りやすいという利点がある。共同開発のカギを握る制御技術に強い企業の買収も検討するとした。
NAND型メモリーは需要が急拡大している。メモリーカードやスマートフォン向けに加え、大量のデータを必要とする人工知能(AI)がブームになり、データセンターの増設が相次いでいるからだ。
調査会社IHSマークイットによると、NAND型メモリー市場に占める東芝メモリのシェアは15%超で世界2位。米IT大手向けに強く、約40%のシェアを誇る韓国サムスン電子との差は広がりつつある。杉本氏は「東芝メモリは出遅れた」と認めつつも、顧客にとって「調達先をサムスン1社に絞るのはリスクだ」と述べ、シェア拡大の余地は大きいとの見方を示した。
東芝メモリの2018年3月期…