黒潮が流れる青い海に、ぽっかりと浮かぶ島。東京から約2千キロ、台湾まで約100キロ。日本最西端の沖縄県与那国町は2年前、人口が200人増え、ほぼ10年ぶりに1700人を超えた。船をこいで競うハーリー、地区対抗のソフトボール大会……。島人の結束につながる伝統行事がいま、活性化している。
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沖縄はいま
「自衛隊誘致で人口減少に歯止めを」「自衛隊が来れば米国の戦争に巻き込まれる」――。2007年以降、2度の町長選、住民投票と、島を二分する議論の末、隊員約160人の陸上自衛隊駐屯地がやってきた。
財政も潤った。駐屯地用地の賃料年約1500万円は、学校給食費の無償化に充てられた。15年あまりなかったごみ焼却場は、30億円弱の建設費の9割を防衛省の補助でまかない、来春までの着工を目指す。
今月の町議選では駐屯地前で、「感謝と支持」を訴える候補者の姿が目立った。「若者がいないから、隊員は欠かせない。来てくれて本当によかった」と、演説した前西原武三町議(64)は言う。
国境の島の駐屯地は、南西諸島防衛の強化を掲げる政府方針の象徴的な存在。沿岸監視部隊が、中国の動きにレーダーと電波情報の収集でにらみをきかせる。宮古島には地対艦ミサイルなどを配備する駐屯地が着工。石垣島でも計画が進む。それぞれの島で賛否が渦巻く。
与那国島ではもう、賛否が語られることはない。誘致反対派だった泡盛製造業の大嵩長史さん(49)は「みんな政治に疲れた」。ある女性は「争いはへきえき。ようやく賛成だった人と話せるようになった」。
一方で、思わぬ亀裂が生じている。自衛隊駐屯が決まった後に、米軍との一体的な運用が現実味を帯び始めたからだ。外間守吉町長(68)は「2年ほど前に、日米共同の離島奪還訓練をしたい、と防衛省側から水面下で話があって断った」と明かす。
昨年5月には突如、自衛隊制服…