「謝罪ではない」とした社長声明から4日後、新潮社は月刊誌「新潮45」の休刊を決めた。35年以上の歴史を持つ雑誌の発行を断念した背景には何があったのか。最も重い「休刊」という判断は妥当だったのか。
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25日夜、東京都新宿区の新潮社周辺では、ツイッターなどでの呼びかけに応じた100人ほどによる抗議活動があった。参加者は、「NO HATE」「心をペンで殺すな」「新潮社は恥を知れ」などと書かれたプラカードを静かに示した。出版関係企業に勤める30代の会社員は「LGBTの人たちに対するヘイトは認められない」と話した。
「謝罪ではない」としていた21日の社長声明から、一転して休刊に追い込まれた背景には、新潮45に対する世論の怒りが収まらなかったことがある。新潮社の本を店頭から下げる動きを見せる書店が出たり、一部の作家が新潮社への執筆取りやめを表明したりするなど、批判が広がっていた。
関係者によると、新潮社では25日朝、50人ほどの社員有志が取締役会に要望書を提出した。謝罪の言葉を発表すること、責任の所在を明らかにして、再発防止策をとることを求めたという。また、連休中に海外の作家にも批判の声が広まったといい、「築いていたものが一晩で崩れていく感じだった」と話す社員もいた。
25日夜に報道陣の取材に応じた新潮社の伊藤幸人・広報担当役員は、「限りなく廃刊に近い休刊。部数低迷で編集上の無理が生じ、十分な原稿チェックができなかった」と述べた。一方、「(自民党・杉田水脈(みお)衆院議員の寄稿を掲載した)8月号だけでは休刊の決定はしていない。10月号に問題があると考えている」とした。
伊藤氏によると、編集部は編集長を含めて6人。18日発売の10月号は前日に刷り上がり、役員らへの配布は発売日の朝だったという。「18日の時点で声明を出す必要があると社長が決断した。社内外で動揺が走っており、結論は出ていなかったが声明を出した」
一方、社長声明にあった「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」が具体的にどの寄稿を指すかについて、伊藤氏は最後まで明言しなかった。10月号に掲載された寄稿の中には、LGBTを「ふざけた概念」とし、犯罪である痴漢行為とLGBTの生きづらさを重ねる内容もあった。
新潮45は月刊「文芸春秋」のような総合雑誌をうたい、1982年に前身の雑誌が創刊された。週刊新潮や写真週刊誌「FOCUS」(2001年休刊)と並び、文芸で知られる同社の中で「社会派」の一翼を担ってきた。事件報道を重視したノンフィクション路線だったころもあったが、現在の若杉良作編集長が就任した16年9月号から、右派系雑誌常連の論客が目立つように。近年はネットでの過激な発言で注目を浴びる論者を次々と紹介するようになっていた。
表現をめぐって雑誌が廃刊した…