星組がこの秋、宝塚歌劇で3度目となる台湾公演にのぞむ。披露するのは、現地で大人気のテレビ人形劇を初めてミュージカル化した「サンダーボルトファンタジー 東離(とうり)劍遊紀(けんゆうき)」。「宝塚の新たな一面を知ってもらえるよう、思い切り爪痕を残したい」とトップスターの紅(くれない)ゆずる。台湾に先立って、大阪と東京でも上演した。
公演は、今月20~28日に台北、11月2~5日に宝塚として初めてとなる高雄の予定。紅にとっては、5年ぶり2度目の台湾だ。「台湾の方に、本拠地で観劇してみたいという強い気持ちを持っていただくためには、私たちがその何十倍も強い気持ちを持ってのぞまなければ」と意気込む。
演じるのは、悪人をこらしめて楽しむ謎多き主人公・凜雪鴉(りんせつあ)。「どこか遊び心があってヒーローとも悪役とも違う。この男をもっと知りたいと思わせたい」。大ぶりな衣装をまとい、長い煙管(きせる)を手に、優雅な立ち回りをみせる無敵の美丈夫でもある。意識するのは歌舞伎だという。「弁慶が舞台を去った後も余韻を残していくように演じられれば」
槍(やり)や剣の使い手らが次々に登場し、最強の聖剣をめぐって駆け引きや戦いを繰り広げる。
漫画やアニメの舞台化でも力を発揮してきた宝塚らしく、登場人物はみな、端正な人形そのもののようなビジュアルの完成度だ。紅は「一場面一場面ごとに、きっちりとみせていきたい」。
併演のショー「キラールージュ/星秀☆煌紅」は、この春大劇場で上演した作品に、現地で有名な楽曲を黒燕尾(えんび)の紅が歌い上げる場面などが加わった。紅扮するホール案内嬢「紅子」が登場するコーナーもあり、綺咲(きさき)愛里(あいり)や礼(れい)真琴(まこと)と爆笑トークを繰り広げる。
◇
「サンダーボルトファンタジー(サンファン)」は、台湾の伝統的な人形演劇「布袋(ほてい)劇」をもとに、日台合同の映像企画として制作され、2016年にテレビ放送が始まった。アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」などで知られる虚淵(うろぶち)玄(げん)が、原案・脚本・総監修を手がけ、アジア各国で人気を集めている。テレビシリーズの第2期の放送が今月から、BSイレブンなどで始まる。(尾崎千裕)