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30回目の鈴鹿F1 早さの秘訣「竹ぼうき」海外も注目

1987年に始まった鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)でのF1日本グランプリ(GP)が、2年の空白を挟みながらも今年で30回目の節目を迎え、5日に開幕する。華やかさの陰で、アクシデントと背中合わせでもあるレースの円滑な運営を支えるのは、「オフィシャル」と呼ばれるボランティアたちだ。本業を抱えながらも鈴鹿に通い詰め、レース愛と使命感を胸に、歴史を紡いできた。


来年以降3年間も鈴鹿でF1


「セナ」の名、冠したスポーツカー 1億円超、500台完売


セナとプロストの接触 安否確認に走る レスキューの新海さん


9月下旬、一般向けの走行会が行われた鈴鹿サーキットの待機室に、オレンジ色のつなぎに身を包んだ新海(しんかい)幸弥さん(64)の姿があった。事故があれば真っ先に駆けつけ、ドライバーの安否を確認する「レスキュー」という役割を担う。


普段は愛知県知多市で農業を営む。交通費の一部や宿泊場所などの提供を受け、F1以外も含めて年30回ほど鈴鹿に通う。「車とレースが好きだから、一番近いところで携われるのが何よりうれしい」


小さい頃から乗り物好きで、学生時代は二輪レーサーの手伝いもした。レース専門誌にあった広告を見て応募。3回目の日本GPが開かれた89年から、鈴鹿でレスキューを務める。


当時は国内のF1ブームが黄金期を迎えようとしていた。スタンドを埋め尽くす観客、間近で聞くエンジンの爆音、高熱のタイヤから溶け落ちたゴムのぬめりに、心が震えた。


その年の決勝で歴史的な場面に遭遇した。待機していた最終コーナー手前で、強豪マクラーレン・ホンダの同僚同士、アイルトン・セナ選手(ブラジル)とアラン・プロスト選手(フランス)のマシンが接触。ドライバーとして熾烈(しれつ)なチャンピオン争いを繰り広げる2人は当時、確執がうわさされていた。共にけがはなく、新海さんがプロスト選手のマシンに乗ってピットに届けた。セナ選手は完走したが、レース後に失格処分となった。


2014年の小林可夢偉(かむい)選手を最後に、F1から日本人ドライバーが消え、人気は低調気味だ。昨年は観客動員数が最盛期の半数にも満たなかった。新海さんも「レスキューに入ってくる新人も少なくなってきた。以前は地元の学生たちも結構いて、にぎわってたんだけどね」と寂しがる。


爆音がとどろくコース脇の待機室に、アクシデントの一報が入った。新海さんはすぐ無線機をつかみ、トラックで現場へ急行した。


今年の日本GPも変わらず、救急車のドライバーとしてレースに尽くす。


仕事の秘訣は「竹ぼうき」 コースマーシャルの木村さん


名古屋市中区の会社員木村幸太郎さん(47)は、事故の処理にあたる「コースマーシャル」だ。後方のドライバーに旗で状況を知らせたり、コースに駆けつけて散らばった部品を片付けたり。迅速な対応で、レース続行に努める。


鈴鹿の日本GPでは、日本伝統の「竹ぼうき」でコースをはくマーシャルが目を引く。海外ではテニスコートにも使われるコートブラシが主流だが、木村さんは「竹ぼうきは散らばった部品をより遠くに飛ばせる。仕事の早さの秘訣(ひけつ)です」。近年では初開催を控えた海外のサーキットから視察団が訪れ、仕事ぶりを学んで帰るという。


木村さんは中学生の頃からレー…


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