各地の湖や河川で大量発生する藻や水草を駆除する「救世主」が現れた。松江市の業者が国内で唯一所有する藻刈り船「浮き丸」だ。船底にある、水陸両用の回転ベルトをいかし、水深に関係なく自在に移動が可能。全国各地に出向いては、先端に付いた巨大な刈り取り機で、悪臭の元にもなっている藻や水草を絡め取る。(市野塊)
強い日差しが照りつける松江市の堀川に、藻刈り船「浮き丸」が現れた。いかだのような箱船で、全長4・7メートル、幅2・1メートル、重量1・4トン。真ん中に据え付けられた台座からレバーを操作して、先端に付いた金属製の巨大なクシを水中からすくい上げると、水草や藻がびっしりと絡みついた。
作業員の男性は「水草は川底まで根を張っていて取りにくいんだ。今年は去年より多いんじゃないか」。この日取り除いた藻や水草は約2トンに上った。
藻や水草の除去は通常、浅瀬では小型船に乗った人が熊手ですくい上げ、大きな湖の深場ではクレーンの付いた台船を別の船で引っ張って作業するなど、手間がかかった。
これが浮き丸なら、1台で対応できる。船の両側に付いた回転ベルトの深い溝が、深場ではひれのように水をかき、浅瀬では底をしっかりとつかみ走行することができる。
水草のツツイトモや藻類のシオグサが大発生する堀川で、浮き丸は昨年から作業に参加。人力ですくい上げることなく、大きなクシでどんどん刈り取っていく。市河川課によると、藻などは堀川遊覧船のスクリューに巻き付いて営業に支障を来したり、岸にヘドロのようにたまったりし、関係者の悩みの種となってきた。昨年は6~11月、県と合わせて約1400万円をかけ過去最多の129トンを除去したという。
浮き丸を所有するのは、松江市の船舶整備販売会社「大新」(従業員14人)。昨春、スウェーデンの会社から2千万円で購入した。顧客から水草の大量発生が各地で問題になっていると聞いた大築武司社長(74)。「水辺に親しめないのはよくない」と、船を販売する会社としての責任を感じ、3年前から欧米の会社に問い合わせて、川幅の狭い日本の地形に合ったものを探し当てたという。
水深に関わらず作業が可能な浮き丸に、全国から声がかかる。
今年はこれまでに、戸田漕艇場(埼玉県戸田市)や、諏訪湖(長野県諏訪市など)、神奈川県横須賀市の海岸、広島県福山市の河川などで作業にあたった。昨シーズンも全国7カ所の湖や河川で清掃した。大築社長は「全国から声がかかり驚いた」と話す。
トラブルは各地で絶え…