人権の尊重をうたう東京都の条例案が3日、都議会総務委員会で賛成多数で可決された。ヘイトスピーチ規制と、性的少数者を理由にした差別の禁止が柱で、いずれも都道府県の条例で初となる内容だ。5日の本議会で成立し、来年4月に全面施行される見通しだが、恣意(しい)的な運用や「表現の自由」への影響を心配する声があがっている。
可決されたのは「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」。2020年東京五輪・パラリンピックに向け、人権問題への姿勢をアピールするため、小池百合子知事が昨年12月に制定方針を表明していた。
条例案では、ヘイトスピーチ対策として、公園やホールなど都の施設の利用制限を盛り込んだ。都によると、差別的な言動の可能性が高く危険性が明らかな場合を想定しているが、都が具体的な利用制限の基準を設けるのは条例成立後だ。
施設利用の事前制限は、川崎市が昨年11月にガイドラインを公表。京都府や京都市も同様のガイドラインを作るなど動きが広がりつつある。一方で、16年に全国で初めてヘイトスピーチの抑止条例を設けた大阪市も事前の利用制限を検討したが、最終的に見送った。
都の条例案に対し、田島泰彦・元上智大教授やジャーナリスト有志らのグループが「表現の自由を不当に侵害し、自由な言論やジャーナリズムを脅かしかねない」と反対声明を発表。市民団体「外国人人権法連絡会」共同代表の丹羽雅雄弁護士は「首都である東京で、ヘイトスピーチを含む差別を防ぐための条例ができることは評価できる」としつつ、制限基準が条例に書かれない点を「知事が恣意(しい)的に基準をつくれてしまう」と問題視する。
同連絡会は「集会の自由の制限…