北朝鮮のハッカーが銀行などの金融機関への侵入を繰り返し、これまでに数億ドル以上を盗んでいた、と3日、米セキュリティー企業ファイア・アイが発表した。核やミサイル開発での経済制裁下で資金を獲得するためと見られ、南北首脳会談や米朝首脳会談で核実験やミサイル発射が止まった後もサイバー攻撃は活発だという。
同社が「ATP38」と名付けた北朝鮮政府系のハッカー集団は、遅くとも2014年には活動を開始。これまでに少なくとも11カ国の16の銀行などの金融機関にサイバー攻撃を仕掛けていた。従業員や出入り業者を探り、銀行間取引のネットワークを詳細に分析し、不正送金させるようにハッキング。犯行後はデータを消去していたという。発覚しているだけで、11億ドル(約1260億円)以上を盗もうとしたとしている。直近では5月にチリ銀行がハッキングされ1千万ドルの被害が出ている。
北朝鮮ハッカーをめぐっては、米司法省が9月、北朝鮮当局が関係するハッカー集団「ラザルス」に所属する男を訴追。16年に、バングラデシュ中央銀行に攻撃を仕掛け8100万ドルが盗まれた事件に関与したとされる。(ワシントン=香取啓介)