ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーは5日、最高裁判事とイラン生まれの詩人の2人を新たな会員に選んだと発表した。アカデミーは、会員を妻に持つ文化界重鎮の男の性的暴行をめぐるスキャンダルで、今年の文学賞の選考を見送り、組織改革を迫られていた。
アカデミーは、疑惑の調査や男の妻の処遇をめぐり内部対立が激化。改革派の事務局長らが辞意表明に追い込まれ、男に近い守旧派が残る形になった。これに世論は反発。定数18人のうち8人が欠員状態となって機能不全に陥った。
後援者であるスウェーデンのカール16世グスタフ国王は、会員を終身制とする規約を変更し、辞任や交代を認めた。これを受けた今回の会員選出で定足数の12人まで増えた。AFP通信によると、国王は「新会員の選出は前向きなこと。アカデミーが組織の信頼を再構築する機会を与えられ、重要な仕事を続けられることを望む」との声明を出した。
スキャンダルの発端となった男は、1日に性的暴行罪で有罪判決を受けた。賞を主催するノーベル財団の幹部は先月末、ロイター通信の取材に、選考を別団体に任せる可能性も示唆。組織改革が進まなければ来年も文学賞の発表を見送る可能性を示し、さらなる委員の辞任の必要性に言及していた。今回の新会員選出で改革が十分と認められ、賞の再開にこぎ着けられるかは不透明だ。(ロンドン=下司佳代子)