「上手な医療のかかり方」を考え、広めるための懇談会を厚生労働省が設置し5日、初会合を開いた。医療機関の適切な受診方法について、議論の場を設けるのは初めて。不要不急な受診を減らし、長時間労働が問題になっている医師の負担軽減を目指す。
背景には、不適切な受診によって大病院や土日祝日に外来患者が集中して、患者の待ち時間が長くなったり丁寧な説明が受けられなかったりすることがある。休日・夜間の不急の受診で医師の負担が増えると、医療事故の可能性が高まるなど医療の質にも悪影響を与えかねない。厚労省は適切な受診が増えることで、医療の質の向上や、医師の働き方改革につながるとしている。
子どもが病気になった時向けの「#8000」や、救急車を呼ぶべきか迷う際の「#7119」など電話相談の仕組みは以前からある。この日の初会合では、夜間・休日に受診する人の大半は緊急性を判断できず、電話相談も知らないなどの意見が出た。信頼できる情報を発信する必要があるとされた。
懇談会メンバーの知ろう小児医療守ろう子ども達の会代表理事、阿真京子さんは「大半の方は知らないだけ」と話し、医療のかかり方を理解した保護者は受診行動が変化することを紹介した。患者と医師の意思疎通を病院で支援するNPO理事長の豊田郁子さんは「(医療への)アクセスを制限されるという誤解を生まないような伝え方が重要」と述べた。
ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんは、厚労省が示した資料で「自殺や死を毎週、毎日具体的に考える」勤務医が3・6%(2015年度)いたデータについて「目を疑った。こういう数字を示して危機感を醸成できるようなデータを示すべきだ」と訴えた。厚労省によると、12~17年度の6年間で29人の医師が過労に関わる労災認定をされ、うち7人が脳や心臓の病気で死亡。未遂を含めて5人が自殺している。
終了後にメンバーのアーティストデーモン閣下さんは「人間の体を借りているので医療にかかることもあるが、近くの総合病院が便利でつい行ってしまう。専門家の話を聞いて今までの我が輩のやり方も考え直す必要があると感じた」と話した。
厚労省は今後、上手な医療のかかり方を広めるため、医療機関にかかる前に患者が情報を得るためのウェブサイトをつくるほか、電話相談の周知徹底、働いている人が診療時間内に受診できるよう企業に協力を求めていくという。(姫野直行)