15日に閉幕した岐阜市の長良川鵜飼(うかい)。平成最後となる今季は豪雨や台風にたびたび見舞われ、観覧船の運航中止が全157日中、過去最多の42日にのぼった。地元温泉街では宿泊のキャンセルも相次ぎ、来季に向けて立て直しを迫られる。
日中の雨が上がり、最終日の鵜飼いは午後7時半すぎに始まった。かがり火をたいた6隻の鵜舟がこぎ出し、鵜匠たちが「ホウホウ」と声を上げながら縄を操った。鵜がアユを捕まえると、観覧船から歓声が上がった。
「今日はやれるか、毎朝気になった」。鵜匠代表の杉山雅彦さん(58)は、予定の3分の1近くが中止になった今季をこう振り返った。これまで観覧船の中止が最も多かったのは、伊勢湾台風があった1959年の26日。今季はそれを16日も上回り、乗船者数も7万6330人と、統計を取り始めた65年以来、初めて10万人を割った。「インスタ映え」を狙った女性限定の観覧船を企画するなど、乗船者数アップに力を入れていただけに、関係者の失望は大きい。
中止が多かった大きな要因は、度重なる豪雨で川の流れが変わったことだ。7月の西日本豪雨では観覧船乗り場に大量の土砂が流れ込んだ。重機でかき出して航路を造り直したが、土砂の量が多く、川の本流に続く航路が狭くなった。この影響で水流が速くなり、以前は運航できた水位でも危なくなったという。
台風も重なり、水かさが増すたび土砂の堆積(たいせき)場所も変わった。市鵜飼観覧船事務所の林素生所長は「出水があるたび、川の状態を確認し、観覧船が出せるかどうか判断を繰り返した」と話す。
鵜飼いは実施できたが観覧船を出せなかった日が、今季は15日あった。七つの旅館やホテルからなる岐阜長良川温泉旅館協同組合によると、送迎バスを出して河原から見物できるようにするなど挽回(ばんかい)に力を入れたが、9月の宿泊客は昨年に比べて約1割減ったという。温泉旅館の担当者は「今後、旅行会社がPRしにくくなるのでは」と不安を漏らした。
観覧船事務所を運営する岐阜市は来季に向け、土砂を取り除いて元の航路を造り直す復旧作業などを予定している。一方、観光関係者からは「観覧のスタイルを見直す時期かもしれない」との声も上がっている。京都の鴨川のように河原に川床を造って観覧してもらう案などがあるという。(松浦祥子、山下周平)