横綱白鵬が憧れ続ける、戦前の大横綱・双葉山。いまだ超える者のいない大相撲史上最多の69連勝を打ち立てた双葉山は、連勝が止まった際、黒星を知らせようと、ある後援者にこんな電報を打った。《いまだ木鶏(もっけい)に及ばず》。その言葉の元となった書が18日、双葉山の弟子だった時津風元理事長(元大関豊山)から、国技館(東京都墨田区)に併設されている「相撲博物館」に寄贈された。
相撲特集:どすこいタイムズ
書は、双葉山が師と仰いだ哲学者の故安岡正篤さんの揮毫(きごう)。横綱昇進前の双葉山に中国の故事を安岡さんが伝えたところ、双葉山は大層感じ入ったという。
故事は、闘鶏好きの王に贈った軍鶏(しゃも)の話だ。訓練から10日たって王が「もういいか」と尋ねたところ、「まだダメです。空威張りして、『俺が』というところがあります」。さらに10日、10日……と待ち続け、ついに、他の鶏の声を聞いても全く動揺せず、泰然とする姿はまるで木彫りのよう。どんな鶏も、その姿を見ただけで逃げてしまう――。そんな軍鶏に育った。
双葉山は「木鶏」の揮毫をせが…