過激派組織「イスラム国」(IS)はヤジディ教徒らを、支配地に設けた「市場」で売買していた。ISは関係国の包囲網で弱体化したが、多くの被害者は恐怖の記憶を消せず、今も避難生活を続ける。支援者らは、ノーベル平和賞によって悲劇に注目が集まったことで、援助の輪が広がることを期待する。
「いっそ殺して」男6人から性暴力 世界に暴かれた実態
ISの最大拠点だったイラク北部モスルに、ヤジディ教徒の女性を売買する「市場」があった。チグリス川西岸に位置する旧市街の中心に立つ7階建ての建物前の路上だ。
地元NGOの調査によると、市場は週2回や月1回など不定期に開かれ、1回に売買される人数も5~20人と幅があった。対象になる女性たちは手錠をされ、顔をさらされたまま並ばされる。戦闘員が告げる女性たちの年齢を聞きながら、買い手の男たちが金額を叫んでいたという。
無職男性のアフマド・クレフさん(28)は今月上旬、朝日新聞の取材に、かつて目撃した女性たちの様子を振り返った。ISがモスルを占領してほどない2014年夏ごろ、旧市街の路上でミニバスの運転手に呼び止められた。「トイレはどこだ」。車内には女性6人と自動小銃を持った戦闘員8人が乗っていた。
クレフさんは同年代の女性2人…