妻が夫からの相続分を、生前に1人の子どもに無償で譲渡した場合、他の兄弟の相続権が侵害されるかどうかが争われた訴訟の上告審判決が19日、最高裁第二小法廷であった。鬼丸かおる裁判長は「無償の譲渡は原則として贈与にあたる」という初判断を示し、相続権侵害に当たるとした一、二審判決を支持した。
民法の定めでは、相続人は最低限得られる財産の取り分(遺留分)が保障されている。贈与された財産は、遺留分を算出する際に考慮されなければならないため、訴訟では相続分の無償譲渡が「贈与」にあたるかどうかが争われた。
第二小法廷は判決で、譲渡によって、相続人の間で経済的利益が移動すると指摘し、「財産的価値がある相続分を無償譲渡すれば、贈与にあたる」と判断。遺留分の算出で考慮する必要があるとした一、二審判決を支持し、相続分を譲渡された子どもの上告を棄却した。訴訟でこの子どもは「父の遺産分割で財産を受け取っており、母からの譲渡ではない」と主張していた。
第二小法廷はこの日、同じ争点で争われ、一、二審が「相続分の無償譲渡は贈与にあたらない」と判断していた別の訴訟でも判決を言い渡した。こちらの訴訟では一、二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。(岡本玄)