「インターネットやSNSは使い方がポイント。こうしたものをネガティブに描いている作品は多いが、大工道具のハンマーと同じでただのツールの一つ。犯罪に使われるから悪いもの、と思いがちだが、いいところがたくさんある。使い方次第、ということです」と語るアニーシュ・チャガンティ監督
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映画全編がパソコンの画面だけで展開する映画「search/サーチ」が10月26日から日本で公開される。斬新なアイデアと、サスペンススリラーとして事件が二転三転するストーリーに、サンダンス映画祭2018では観客賞を受賞。アメリカでは当初9館上映から2000館上映に拡大するなど大ヒットを記録した。この作品が監督として劇場用映画デビューとなる27歳のアニーシュ・チャガンティ監督が朝日新聞の電話インタビューに応じ、映画や物語のもう一つの主役であるSNSについて語った。
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映画は、カリフォルニア州に住むデビッド・キム一家のバックストーリーから始まる。結婚から娘の誕生、妻の闘病など携帯電話で撮影された動画やビデオチャット、テキストメッセージなどが映し出される。そこからのあらすじはこうだ。妻が亡くなった後、高校に進学した娘マーゴット。ある日、娘が忽然(こつぜん)と姿を消した。無事を信じるデビッドは、彼女のパソコンからSNSにアクセスする。そこに映し出されたのは、自分の知らない娘の姿だった。SNSで娘がやり取りしていた関係者に接触しながら情報を集めるデビッド。疑いの目はあらゆる人物に向けられていく。一方で、行方不明事件の捜査が進む中で、新たな事実が明らかになっていく……。
全編がパソコン画面で展開される「search/サーチ」(10月26日公開)。ストーリーは二転三転し、意外な結末を迎える=写真はいずれもソニー・ピクチャーズ提供
映画「search/サーチ」(10月26日公開)の一場面から
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――今回の映画のアイデアについて教えてください。
制作会社から「パソコンの画面を使う映画を作りませんか」との話があったが、ちゅうちょしていました。大きな仕掛け、トリックだけで映画を持たせる、というものには決してしたくなかったから。
何カ月も考え、まずは見てちゃんとスリルを感じて、入っていけるような物語があって、二次的に仕掛けがある、というものを作ろうと考えました。オープニングに家族の歴史を描写する場面を思いついた時、深く感動できる物語が表現できるのではないか、と感じた。これを、子どもを探す父の物語として展開していったならばこれまでの作品にはない何か新しいものができるのではないかと確信できた時に、作ろうと決めました。
小さなスクリーンで描かれていることを大きな映画館のスクリーンで見た時に、映画的な体験をしっかり感じとってもらうことができるかということを考えて表現しました。
アニーシュ・チャガンティ監督(左)とデビッド・キムを演じたジョン・チョー
――今回の主人公家族はアジア系アメリカ人のファミリーでした。その家族を中心に描いた理由を教えてください。
実は、大きな意味は全くありませんでした。それが逆に成功した部分だと思います。物語的にはアジア系である必要性は全くない。私自身が子どものころ育ったところが舞台で、そこで出会った人たち、普通の人たちがそのまま登場しています。映画ってマイノリティーが登場する際はその物語に関係があるために登場することが多い。ただたまたま登場する、という作品のほうがまれです。その人の人種などがその場面に全く関係ないところで普通に登場するということをしたかった。
――普段は見せない自分の本心を…