半導体や光通信の世界的権威で「ミスター半導体」と呼ばれ、東北大総長などを務めた西沢潤一(にしざわ・じゅんいち)さんが21日に死去した。東北大が26日発表した。92歳だった。葬儀は近親者で営まれた。東北大はお別れの会を検討している。
1926年生まれ。仙台市出身。東北大工学部を卒業し、助教授、教授などを経て、90~96年に同大総長、98年に岩手県立大学長に就任。2005年春からは、首都大学東京の初代学長を務めた。
電子材料の基礎的な性質を研究し、pinダイオード、半導体レーザー、収束性光ファイバーという光通信の3要素を考え出し、米国の学者らが「日本にはニシザワという名字が多いのか」と話し合ったという逸話が残る。トランジスタや発光ダイオードの高機能化でも研究をリードした。
日本学士院賞、朝日賞、文化勲章などのほか、米国電気電子学会のエジソン賞を日本人で初めて受賞。科学者として精力的に世界中を歩き、米国など西側だけではなく、旧ソ連などにも幅広い人脈があった。
「人のやっていないことを」「ほかより早く」「しかし、間違ってはならない」。この三つを研究姿勢に掲げた。ときに学界の通説と衝突しては「闘う学者」とも評された。憲法改正を掲げる運動団体「日本会議」の大会であいさつをするなど、保守的な言動でも知られた。
絵画や音楽の鑑賞にも熱を入れ、フランスの美術館でモネの「睡蓮」が逆さに展示されているのを見つけ、地元メディアに紹介されたこともあった。
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東北大の大野英男総長は「青葉山新キャンパスへの移転計画をとりまとめるなど、東北大の発展へのご功績に改めて感謝し、謹んでお悔やみ申し上げます」とのコメントを発表した。