地震や洪水などの災害で通信機器が使えなくなったときのために、熊本県の僧侶たちがアマチュア無線のネットワークを構築した。被害状況を把握し、救助したり救援に赴いたりできるようにする。「すべての人を救いたいという阿弥陀(あみだ)様の本願のために」と真剣だ。
「こちらJKAL」。アンテナだらけの乗用車からマイクで呼びかけたのは、熊本県和水(なごみ)町原口の正元寺住職寺添和南さん(70)。「JKAL」はコールサインではない。アマチュア無線の免許を持つ僧侶らの防災チーム「浄土真宗本願寺派熊本教区アマチュア無線リーグ」の頭文字だ。
大きな災害が起きたときに僧侶に何ができるか……。東日本大震災以降、そんな課題を話し合ってきた。アマチュア無線が趣味の寺添さんらが電話やインターネットの代わりに無線が役立つのではと考え、2014年にJKALを組織した。現在、10人の僧侶と6人の門徒が参加する。
24歳のときにアマチュア無線の免許を取得した寺添さん。1973年、阿蘇方面で交通事故で立ち往生している車に遭遇した。携帯電話などない時代。車載の無線機で救助を呼びかけた。たまたま無線を聴いていた消防署員がすぐに救急車で迎えにきた。寺添さんはこのときに「アマチュア無線は命綱だ」と思った。
2年半前の熊本地震では、県内外の寺から救援物資が本堂に運び込まれ、寺添さんらが益城町などに毎日運んだ。電話やネットがつながっていたためアマチュア無線の出番はなかったが、余震が続くなか、通信が途絶えたときに備えて、無線機だけは手放さなかった。
JKALは定期的に無線機のテ…