三重県沖の熊野灘で、これまで日本近海では見られなかったアジ科の魚が初めて確認されたと、三重大大学院水産実験所の木村清志所長(魚類分類学)が発表した。本来はインド洋から西太平洋の熱帯域に生息する魚で、和名を「キツネアカアジ」と名付けた。地球温暖化の影響が考えられるという。
キツネアカアジは体長約30センチで、尾びれが赤い。体の中央を通る側線の前方は丸い円鱗(えんりん)、後方はトゲのある稜鱗(りょうりん)で覆われるなどムロアジ属の特徴を持つ。2016年10月から今年1月にかけて三重県の御浜町沖と南伊勢町贄浦で、定置網漁や巻き網漁で見つかった3個体について、世界に分布する尾びれの赤いムロアジ属4種と比べたところ、その1種と一致したという。
木村所長は「約15年前から、熱帯の魚が熊野灘に頻繁に出てきている。地球温暖化の一つの資料として価値がある」と話した。(小林裕子)