米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画で、防衛省沖縄防衛局は1日、辺野古沿岸部の埋め立てに向けた工事を再開した。県が8月末に埋め立て承認を撤回し工事は止まっていたが、10月31日に撤回の効力が停止され、その翌日に再開に踏み切った。県は猛反発している。
本土との溝、基地問題の行方は…沖縄はいま
1日午前、辺野古沿岸部の海上で、工事区域への立ち入りができないようにするためのフロート(浮き具)の設置が始まった。本格的な工事再開前の準備作業で、防衛省は、埋め立て承認の撤回を受けて撤去していたフロートや、土砂の流出を防ぐ汚濁防止膜などを再設置した上で、早ければ11月中にも土砂投入を始める考えだ。
玉城デニー知事は1日、記者団に「安倍(晋三)首相との対話を求めているにもかかわらず、工事が再開されたことは極めて残念だ。引き続き、対話によって解決策を導く民主主義の姿勢を粘り強く求めていきたい」と述べた。
工事をめぐっては、県が8月31日に埋め立て承認を撤回。国は法的根拠を失い、工事ができなくなった。9月30日の知事選では、辺野古移設に反対する玉城氏が、安倍政権が全面支援した候補に8万票の差をつけて当選。10月12日に首相や菅義偉官房長官と会談し、辺野古移設反対の意思を伝え、問題解決に向けた対話を求めた。
だが、防衛省はその5日後の17日、石井啓一・国土交通相に埋め立て承認撤回の効力停止を申し立てた。30日に申し立てが認められ、31日に県などに通知書が到着して撤回の効力が止まった。
国交相の決定を不服として、県は国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し立てる方針だが、玉城氏は首相らに再度の会談を申し入れている。31日にはハガティ駐日米大使と都内で初会談した。日本外国特派員協会での会見や、現地世論に訴えるための訪米も予定しており、「辺野古ノー」を積極的に発信していく姿勢を示している。(山下龍一)
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本日、沖縄防衛局から、県に対し、辺野古新基地建設に係る工事を再開し、フロートの設置作業を行うとの連絡があった旨の報告を受けました。
私は、去る10月12日の安倍総理や菅官房長官との面談においても、対話の重要性を直接申し述べたところであり、今回の国土交通大臣の執行停止決定を受けて、改めて、安倍総理大臣との面談を求めているところでありますが、それにもかかわらず工事が再開されたことは、極めて残念であります。
県は、埋め立て承認の取り消しを適法に行ったものであり、今回の執行停止決定は有効と認められるものではありません。
今回の執行停止決定に対し、県は、国地方係争処理委員会への審査申し出を検討しているところではありますが、承認取り消しに至った背景や今回の執行停止決定に関する問題も含めて、政府との率直な意見交換を進めることが重要であると考えております。
安倍総理大臣は、所信表明演説において「沖縄の皆さんの心に寄り添い」と発言されていることからしても、対話による解決の重要性は、総理ご自身も認識されているものと受け止めております。
私は、今後も政府に対し、沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾け、工事を強行することなく、対話によって解決策を導く民主主義の姿勢を、粘り強く求めてまいります。
平成30年11月1日
沖縄県知事 玉城デニー