子どもの手足に急にまひが出る「急性弛緩(しかん)性まひ」の報告数が、10月ごろから増加している。3年前、エンテロウイルスD68感染症の流行と同時にまひの報告が相次ぎ、厚生労働省は今年5月から全国の医療機関に報告を求め、監視を強めていた。今回も関連が指摘されている。専門家は手洗いの徹底と医療機関への早めの相談を呼びかけている。
国立感染症研究所によると、全国で週に数例だったまひの報告が最新の1週間(10月22~28日)で9例報告された。その前週も10例だった。感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長は「1週間に10例は多い」と指摘する。5月以降の累計は86例に上る。兵庫、岐阜で8例、東京、愛知で6例、福岡5例、埼玉、千葉、神奈川、大阪で4例と続く。
原因としてエンテロウイルスD68の感染が指摘されている。小児まひとも呼ばれるポリオや手足口病を引き起こすウイルスの仲間だ。せきのしぶきなどで感染し、夏から秋に流行する。発熱など風邪に似た症状が出る。対症療法しかなく、感染を防ぐためのワクチンもない。
病原体の検査には時間がかかるため、現時点ではまひの患者の一部からしか検出されていない。だが、各地の医療機関から今年は今月6日までに、呼吸器の病気を含めてウイルスの検出が26件報告された。昨年は6件、16年は1件だった。
285件報告された15年は、すべてがエンテロウイルスD68との関連があるとは確認できていないが、流行のあった8~12月に手足のまひが出て、脊髄(せきずい)に異常があった人が約60人に上った。大人は4人だけで、半数以上が5歳未満だった。その多くにまひが残った。
研究班に参加する吉良龍太郎・福岡市立こども病院小児神経科長は「この病気はまだ十分に知られておらず、風邪のような症状の後に手足にまひが出たら、医療機関に相談してほしい。予防には手洗いやうがいが欠かせない」と話す。(竹野内崇宏)