トランプ米政権による対イラン制裁が原油市場を揺さぶっている。5日に発動されたイラン産原油の禁輸制裁では、日本は一時的な適用除外が認められた。関係業界は先月に停止したイラン産原油輸入の再開に動き、原油価格も落ち着いてきている。ただ米政権のイランへの強硬姿勢は変わらず、価格高騰への懸念は根強い。
国内の石油業界は、ひとまず適用除外に胸をなで下ろした。石油精製で取扱量の3割をイラン産原油が占める富士石油は「喜ばしい。イラン産の再調達を検討したい」(広報)。元売り最大手のJXTGホールディングスも「原油調達先の多様化は大事。輸入再開の検討を進めたい」(広報)と歓迎する。
各社はイラン産の輸入再開に向けた検討を始めるが、取引継続には不安定さがつきまとう。今回の適用除外も猶予期間は180日。「米中間選挙前に、米国内のガソリンなどの価格高騰を一時的に抑える狙い」(アナリスト)との見方もある。
政府は、180日後も適用除外が受けられるよう協議を続ける方針。世耕弘成経済産業相は6日の閣議後会見で「米国側の対応がエネルギーの安定供給や日本企業の活動に悪影響を及ぼさないように緊密に意見交換したい」と述べた。
日本の原油輸入量に占めるイラン産は17年で5%程度。07年は約12%を占めていたが、米オバマ前政権時の経済制裁もあって依存度を減らしてきた。今年5月にトランプ政権がイラン制裁再開を表明し、各社は10月から代替調達を始め、「安定供給に支障は生じない」(大手幹部)とする。
ただ、イランは長年にわたる親日国で、世界の原油生産量、原油確認埋蔵量がいずれも4位という原油輸出大国だ。資源が乏しい日本にとって、取引を続ける意義は大きい。イラン産は価格が比較的安いメリットもある。
最近の原油市場は中東情勢の不安定さに揺さぶられている。米政権のイラン制裁再開や、サウジアラビアの記者殺害問題などで供給不安が高まり、先月は一時、米国産WTI原油の先物価格が1バレル=76ドル台と、4年ぶりの高値となった。その後世界的な株安などもあり下落したが、なお高水準だ。
原油は多くの石油製品のもとになり、価格動向は経済を左右する。イラン産原油の供給の不透明さは、関連業界の収益に不安を与え、景気の先行きにも影響を与える。化学大手の幹部は「原油価格が乱高下するのが一番困る。不安だが、先行きを見守るしかない」という。(桜井林太郎、箱谷真司)