宮崎市の中心部にある老舗の万年筆専門店に、毎日のように通ってくるネコがいる。名前は「ロク」。店頭でうたた寝する姿が愛らしく、通りすがりの人たちのちょっとしたアイドルになっている。
ロクが姿を見せるのは、宮崎市橘通東2丁目にある創業86年の「健康堂」(荒川幸子〈さちこ〉店主)。150メートルほど離れた家の飼いネコだが、朝になると健康堂までやってくる。その時間は、午前7時半だったり午前9時半だったり、気まぐれだ。
表のシャッターが閉まっているときは、しっぽでノック。ロクの寝床として店先に段ボールの小箱を置いているが、シャッターが閉まっていると落ち着いて眠れないらしい。
健康堂に通うようになった時期ははっきり覚えていないが、少なくとも3年は経つという。荒川さんが、ロクの飼い主が所有する駐車場を借りていた際、ロクが足元にまとわりつき、車のボディーに乗るなどなついてきた。店までついてくるようになり、そのうち行き来するようになった。
昨年5月ごろ、ロクは一時、行方が分からなくなった。荒川さんも近所を探したが見つからなかった。半年後、大淀川を挟んで対岸に位置する宮崎市の大塚地区で無事保護。健康堂通いも復活した。
もともとはネコ嫌いだったという荒川さん。「ロクが来てくれるのが楽しみ。来ないときは大丈夫かと心配になる」
ロクに興味を持って足を止めた人が、万年筆やボールペンを買っていったこともある。「招き猫」としても頼りにされている。(伊藤秀樹)