「昭和九年九月二十一日 風災記念碑」
そう刻まれた石碑が、京都市伏見区の府立桃山高校の校庭にある。高さ約2・7メートルの石碑の背面には、559文字の漢字とカタカナがびっしりと刻み込まれている。
校舎倒壊、女性教員は児童抱え… 遺品が語る美談の実像
碑文は、当時の桃山中学校の校長が記したとされる。「我が校の永久に忘れてはならない日である」という書き出しから始まり、台風の強風で校舎の18教室が全壊したが、犠牲者は一人もいなかった、と伝える。一人の死傷者も出さなかったのは普段の訓練のたまものだったと、視察に訪れた文部大臣が称賛したことも付け加えられている。
避難遅ければ、わが子は…
1934年9月21日。超大型の室戸台風が近畿地方を襲った。死者行方不明者が3千人を超え、「昭和三大台風」の一つに数えられる。
災害考古学
地震や台風、火山の噴火など、日本列島は様々な自然災害に襲われてきました。今年に入っても西日本豪雨や相次ぐ台風、大阪北部地震など大規模な災害が頻発しています。過去の災害の実態を石碑や遺物、遺跡などから掘り起こす「災害考古学」について、各地で試みられている取り組みを紹介していきます。
現在、桃山高校で地学を担当する村山保(たもつ)教諭(61)は石碑を見て、南海トラフの巨大地震に対する備えだけではなく、台風に備える必要性も感じていた。話を聞いた書道の足立厚子教諭(60)が昨年10月から、2年生の授業の一環で碑文の内容についての調査に乗り出した。
室戸台風による京都市内の学校…