戦時下の広島・呉を舞台にしたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が劇場公開開始から2年を超え、異例のロングランを続けている。SNSなどでつながったファンたちが、それぞれの思いでヒットを支えてきた。(宮崎園子、土屋香乃子)
「2周年おめでとう!」。上映が終わると、客席から拍手がわいた。
11月12日、茨城県土浦市の「土浦セントラルシネマズ」。この日、「この世界の片隅に」は公開開始から2年を迎えた。
ロビーには「HAPPY BIRTHDAY」の飾り付けがされ、午前10時の上映を待ちきれず早くから詰めかけたファンが言葉を交わしていた。この日まで作品を上映していたのは全国でここだけ。ロングランを支えた映画館といえる。
「気がついたらうちが聖地になっていた」と同館の寺内龍地社長(63)は笑う。稼働しているスクリーンは二つだけで、採算は「正直厳しい」。けれど、「どこまで記録が伸びるか。いけるところまでいきたい」。
上映館が減り続けていた昨秋、連続上映日数をカウントするツイッターをみて驚いた。上映時間や駅からの道のりの地図を共有するファンもいて、「映画を盛り上げるためにこんなに動くなんて、なかなかない。思いに応えたい」と感じたという。
土浦の歴史に作品を重ねる。戦中、隣町には海軍航空基地があった。「おやじから昔の町の様子は聞かされていた。軍港だった呉の街を見て、土浦もこうだったのかなあと」
映画関係者によると、公開数カ月で通常「ロングラン」と言われるなか、「この世界」の2年は異例の長さだ。
クラウドファンディングによる資金の後押しで制作された作品の人気を支えるのは、SNSでつながるファンのネットワークだ。
地域の公民館などでの上映情報…