訪日外国人客をいかに取り込み、もてなすか。地方の旅館は新たな局面を迎えている。
11月中旬、福島県境に近い新潟県阿賀町。山あいにある18室の旅館「ホテルみかわ」を中国から来た14人が訪れた。紅葉や酒蔵観光と並んで人気なのが、宿に隣接した温泉プールでの「健康教室」だ。
「さぁ、大きく手を振りましょう!」。指導員の豊島耕さん(58)の呼びかけが、通訳を介して中国語で伝えられる。プール内を動き回ること1時間。上海市から来た黄国強さん(69)は「この年になると健康が何より大事。プールが温泉なんて最高だ」と満足げだ。1年ほど前から、訪日客が目立ってきた。
転機は、中国企業に買収されたことだ。みかわは1994年、同町の前身の一つ、旧三川村が観光振興のために約3億円で建てた。だが、第三セクターの経営はうまくいかず、24年連続で赤字を出した。借金は7500万円にふくれて倒産寸前に。大浴場やプールの修繕費が出せず、従業員の給料も払えなくなった。訪日客が宿泊してくれるなど、考えも及ばなかった。
「やめるか、売るかしかありません」。皇族も訪れた旧「沖縄都ホテル」で事実上のトップを務め、7年前に招かれた深江勝彦社長(83)は黒字化を断念し、阿賀町長に直談判した。
やがて売却は決まったが、日本…