安倍内閣は18日、「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」を閣議決定した。安全保障環境の急速な変化を強調し、宇宙、サイバー、電磁波といった新しい領域を融合した「多次元統合防衛力」の構築を打ち出した。憲法に基づく専守防衛から逸脱するとの批判がある事実上の「空母」導入も盛り込んだ。
「空母」保有を事実上宣言 運用で拡大解釈の余地残す
防衛大綱の改定は2013年以来、5年ぶり。今回の大綱では、安全保障環境が「格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増している」とした。特に軍事技術の進展に伴い、宇宙、サイバー、電磁波といった新領域で「我が国としての優位性を獲得することが死活的に重要」と指摘。それらの領域と陸海空を融合した「領域横断(クロス・ドメイン)作戦」で対応するため、優先的な取り組みとして、相手のサイバー空間の利用を妨げる能力など「サイバー防衛能力」の強化などを列挙。「宇宙領域専門部隊」も新設するとした。
また、防衛大綱と中期防では、飛行場が少ない日本の太平洋側の防空態勢を強化するとして、短距離で離陸し、垂直着陸ができる戦闘機(STOVL機)の運用ができるよう海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修する方針も明記した。STOVL機としては米国製の戦闘機F35Bを導入することを想定している。
歴代内閣は憲法に基づいて「攻撃型空母」は保有できないとしてきた。このため、中期防では改修後の「いずも」では、STOVL機の運用を「有事や災害対処など必要な場合」と説明することで常時艦載はしない考えを示し、政府方針との整合性を図った。
改修後の呼称は、「空母」化の批判をかわす狙いで自公両党が「多用途運用護衛艦」とする方針でいったんは一致し、盛りこむ方向となったが、中期防では最終的に、これまでの「多機能の護衛艦」との表記を使った。
中期防が示した5年間の装備品などの調達規模は、過去最大の27兆4700億円。調達改革などで防衛費の大枠を25兆5千億円まで抑える方針も明記した。
また、安倍内閣は18日、米国製の戦闘機F35を将来的に147機体制とする方針を閣議了解した。現在取得中の42機からさらに105機を追加購入。内訳はF35Aが63機、F35Bが42機となる予定で、追加取得の総額は少なくとも約1兆2千億円に上る見通し。(藤原慎一)