「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。こう詠んだ俳句が秀句に選ばれたのに公民館だよりに載らず、精神的苦痛を受けたとして、作者の女性(78)がさいたま市に200万円の慰謝料などを求めた訴訟で、不掲載を違法とした判断が確定した。最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、5千円の賠償を命じた二審判決を支持し、20日付の決定で市と女性の上告を退けた。
九条俳句作者、思いもよらぬ拒絶 「自由守れ」訴え裁判
一、二審判決によると、女性は2014年6月、集団的自衛権の行使容認に反対するデモに加わった経験から句を詠んだ。地元の句会で秀句とされたが、公民館は「公平中立の立場から好ましくない」として公民館だよりに載せなかった。
一審・さいたま地裁は、公民館では3年以上、秀句を公民館だよりに載せ続けていたと指摘。秀句を掲載しなかったことは、思想や信条を理由にした不公正な取り扱いで「句が掲載されると期待した女性の権利を侵害した」として、5万円の慰謝料を認めた。
二審・東京高裁は、集団的自衛権の行使について世論が分かれていても、不掲載の正当な理由とはならないとし「女性の人格的利益の侵害にあたる」と判断。不掲載の経緯などを踏まえ、慰謝料の額を減額した。
作者の女性は弁護団を通じ「棄却したと聞いてほっとしました。裁判が長く続いたことに、本当に行政は情けないと思っていた。早急に句の掲載を求めたい」とのコメントを出した。(岡本玄)