日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が来年2月1日に発効する。加盟国の代表でつくるEUの理事会が20日にEPAを最終承認し、批准手続きを終わらせた。日本は8日に臨時国会で承認され、国内手続きを終えている。21日にも双方が手続きの終了を伝え、協定により2カ月後の初日にあたる来年2月1日の発効が確定。世界の国内総生産(GDP)の約3割、貿易額の約4割を占める巨大な自由貿易圏が生まれる。
「親愛なる日本と欧州の友人の皆さん。今までで最大の貿易協定が実現します!」。EUのトゥスク首脳会議常任議長(大統領に相当)は欧州議会がEPAを承認した12日、日本語でツイッターに投稿し、喜びを表した。欧州議会も「農業は勝者だ」と声明を発表し、特産のワインやチーズなどの輸出が増えることへの期待感を示した。
農産品や工業品にかかる関税を日本が約94%、EUが約99%撤廃する。日本の輸入関税は、ワインが即時撤廃。チーズは種類によって低関税の枠が設けられ、枠内は16年目に無税となる。EUの輸入関税は、10%かけられている自動車が発効から8年目に撤廃されるほか、電化製品なども撤廃される。
米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP11)が今月30日に発効するのに続いて日EU・EPAが発効し、多国間の自由貿易体制が相次いで実現する。日本は来年1月以降、保護主義的な動きを強める米国との「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉を控える。TPP11、日EU・EPAともに米国の輸出産業にとっては競争上不利になるため、米国では日本との早期の交渉妥結を求める声が相次ぐ。日本政府の幹部は「相手が焦れば、交渉で有利になる」とTPP11と日EU・EPAの「牽制(けんせい)効果」に期待する。
EUも米国との通商協議の真っ最中だ。トランプ大統領は欧州からの輸入車に高関税をかけることを示唆している。一方で、EU内で2番目に経済規模が大きい英国のEU離脱も3月に控える。通商担当のマルムストローム欧州委員(閣僚に相当)は「EPAは公正で開かれた国際貿易体制を支持するすべての人にとっていいニュース」だと強調。日本と足並みをそろえて米国に対抗する構えだ。(西山明宏、ブリュッセル=津阪直樹)