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競馬の「二刀流」、有馬制覇なるか 障害界の絶対王者

中央競馬の1年を締めくくる第63回有馬記念の最大の見どころはオジュウチョウサン(牡〈おす〉7歳、美浦・和田正一郎厩舎〈きゅうしゃ〉)の出走だ。障害レースの最高峰・中山グランドジャンプを3連覇するなど障害界の絶対王者として君臨する最強ジャンパーが平地の名物レースに挑む。競馬二刀流はうまくいくのか。(有吉正徳)


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12日、茨城県美浦村にあるJRAの美浦トレーニング・センターでオジュウチョウサンがレース11日前の調教を行った。


「追い切り」と言われる調教は、厩舎(きゅうしゃ)の同僚馬と並走する「併せ馬」だった。最後の直線でラストスパートを促されると、オジュウチョウサンはピッチを上げて、並んでいた相手を4馬身ほど突き放した。


「100%に近い状態ですね」。追い切りの手綱を取った石神深一騎手は言った。障害レースでコンビを組み、9連勝を飾ったオジュウチョウサンをもっともよく知るジョッキーだ。有馬記念の出走態勢は着々と整っている。


きっかけはファン投票


障害界で圧倒的な強さを誇るオジュウチョウサンを有馬記念に挑戦させることになったきっかけは昨年の有馬記念のファン投票だった。オジュウチョウサンは1278票を集め、最終結果で77位になった。


当時、平地競走で未勝利だったオジュウチョウサンに有馬記念の出走資格はなかった。それにもかかわらず、少なからぬファンが有馬記念出走を願った。


「ファンの夢をかなえたい」。オーナーの長山尚義さんが決断。今年になって目標に向けて動き出した。7月、福島競馬場で行われた平地の開成山特別。4年8カ月ぶりの平地復帰でコンビを組んだのは中央競馬を代表する第一人者の武豊騎手だった。


開成山特別を3馬身差で快勝すると、次は11月の東京競馬場で南武特別に臨んだ。「階級」が1クラス上がり、ライバルも強力になったが、ここでもしぶとく勝利をものにして平地2連勝。障害と合わせて11連勝をマークした。


「(優勝)タイムを見ると一線級とは差があるけれど、平地に復帰して2戦目なので伸びしろはある」と南武特別の勝利を武豊騎手はそう分析した。


今年の有馬記念ファン投票でオジュウチョウサンは10万382票を集め、3位になった。昨年の78倍の得票数だった。この結果、念願の有馬記念出走が確定的になった。


障害レースを経験したメジロパーマーが92年の有馬記念を制したことはあるが、一流の障害馬が有馬記念に出走したことはない。オジュウチョウサンの「二刀流」挑戦は前例のないチャレンジとなる。


長距離も短距離も自在


過去には、こんな「二刀流」もいた。


タケシバオーは短距離から長距離までさまざまな距離で活躍した。「距離の二刀流」をこなした。


4歳の1969年はとくに素晴らしい活躍を見せ、国内で9戦8勝の成績を残した。4月には距離3200メートルの天皇賞・春で優勝。9月の毎日王冠で白星を挙げて中央競馬初の賞金1億円に達した。続く英国フェア開催記念(スプリンターズS)は中山競馬場の距離1200メートルをコース新記録で快勝した。しかも負担重量は62キロだった。


通算29戦16勝。2004年には、その実績を認められ、殿堂入りを果たした。


芝もダートも制したクロフネ


米国生まれのクロフネは芝とダート(砂)の両方のレースでGⅠタイトルを手にした。


初のGⅠ制覇は2001年のNHKマイルカップ。東京競馬場の芝1600メートルで、単勝1・2倍という圧倒的な1番人気に支持されたクロフネは後方からの追い込みを決めた。


4歳の11月には東京競馬場のダート2100メートルを舞台にしたジャパンカップダートで2着に7馬身差をつける圧勝劇を演じた。


クロフネの後、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドンが同じ快挙を達成した。


平地と障害の両GⅠを初制覇


熊沢重文騎手(50)は、1991年の有馬記念を伏兵ダイユウサクに騎乗して優勝した。単勝配当の1万3790円は今も歴代最高記録として残る。


ダイユウサク以外にも平地GⅠで2勝を挙げているが、騎乗の中心は障害レースだ。2012年にはマーベラスカイザーに騎乗し、GⅠ中山大障害を制した。平地と障害の両GⅠを制した初めての騎手になった。


柴田大知騎手(41)も13年に同じ記録を達成した。グレード制導入以前では根本康広、小島貞博の2騎手が平地と障害の大レースを制した。


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