ヤギのチャチャとの散歩が日課になっている高知県四万十市の少女に新しい家族ができた。チャチャのもとに花嫁がやってきたのだ。クリスマスイブの12月24日、ヤギの夫婦はそろって四万十川沿いを歩き、結婚式を挙げた。
あの子はなぜヤギ連れてるの 四万十のハイジ、日々散歩
この春、同市内在住の小学5年林海風(みかぜ)さん(10)の家に、生後まもないチャチャがもらわれてきた。自宅周辺の雑草を食べてもらうためだ。運動不足が気になり、海風さんはチャチャと散歩を始めた。自宅から四万十川のほとりにかけて1時間ほどのんびりと歩く。
海風さんは大きくなるチャチャを見て「お嫁さんを見つけてあげよう」と思っていた。11月にあった県立幡多農業高校(同市)の学園祭で生後8カ月の白いヤギと出会った。高校生が育てていたヤギだ。「かわいい。この子だ」とすぐに決めた。海風さんたちの「求婚」に高校も快諾した。引き取られていく様子を生徒は拍手で見送った。池上幸生教諭(54)は「少し寂しいけど、いい花嫁さんになってほしいですね」。
小さい体が真っ白だったので「小白(こはく)」と名付けた。チャチャの3分の2の大きさだ。2頭はしばらく別々の小屋で飼いながら様子を見た。散歩も別々にした。
両親と相談し、イブの日を結婚式の日と決めた。近所に住む仲良しの小学6年生の橋本遥さん(12)と岡崎咲奈さん(12)を招待した。2人がリンゴやミカン、野菜を使ってクリスマスケーキを作ってくれた。
式の前に散歩だ。2頭を一緒に連れて歩くのは初めてだ。チャチャのリールは海風さん、小白は橋本さんら2人が交代で握った。約2キロ離れた四万十川の沈下橋まで歩いた。道中、チャチャは何度も小白にすり寄る。橋本さんが道端に咲く黄色い花でブーケを作り始めた。「花嫁にあげるの」
正午、自宅で結婚式が始まった。黄色いブーケが小白の首に飾られた。野菜ケーキをチャチャが元気よく食べた。小白が、甘えるしぐさをする。
2頭の散歩は一人では大変なので、友だちに手伝ってもらうことにした。海風さんは「早く赤ちゃんを見たい。チャチャの家族と散歩したい」。(笠原雅俊)