1月2、3日にある箱根駅伝に、千葉県我孫子市の中央学院大学と同県印西市に練習拠点がある順天堂大学が出場する。中央学院大は個性派の選手をそろえ、「総合5位以内」を狙う。順天堂大はエースの塩尻和也選手(4年)を中心に「総合3位以内」を目指す。
中央学院大・釜谷選手「けがで吹っ切れた」
特集:箱根駅伝2019
「けがのおかげで吹っ切れた」。中央学院大の釜谷直樹選手(4年)は故障を乗り越え、夢を実現させようとしている。
兵庫県出身で、同県の西脇工業高校の陸上競技部に進んだ。過去に何度も全国高校駅伝を制している強豪校。「補欠にもなれなかった」。それでも、まじめに練習する姿勢を評価され、中央学院大の川崎勇二監督に誘われた。
大学1、2年時は、それほど記録が伸びなかった。箱根駅伝の補欠に選ばれたのは3年の時。「頑張れば次は正選手になれるかもしれない。夢がかなう」。そう期待を膨らませて練習に取り組んでいた今年2月、左ひざを痛めてしまった。
あちこちの病院に通い、検査や治療を繰り返したが原因は不明。針や灸(きゅう)も試したが痛みは消えず、走れなくなった。「夏までに治らないと引退だ」と覚悟した。ただ、6月になると痛みが次第に弱まり、同月末には走ることができるようになった。「よかった。首の皮一枚でつながった」
最後の箱根路に向け、思い切って考え方を変えた。それまでは練習で故障するのを怖がり、少し余裕のあるスピードで走っていた。「こんなことをしていたら箱根には出られない。また故障してもしょうがない。練習で潰れたらサポート役に回ればいい」。限界ぎりぎりのスピードで練習し、自分を追い込んだ。すると力がどんどんつき、11月の全日本大学駅伝で初めて正選手になった。
川崎監督は釜谷選手について「正選手になるのは難しいかなと思っていたが、奇跡的にけがが治って覚悟を決めたのがよかった」。他の部員のお手本にもなると評価。「故障などがなければ箱根の正選手として起用する」と話す。
17年連続20回目の出場となる中央学院大。過去の最高成績は総合3位で、今年1月の前回は総合10位だった。部員全員で決めた今回の箱根駅伝の目標は「総合5位以内」だ。
下りが得意な釜谷選手は「走らせてもらえるなら復路のスタートとなる下りの6区を走りたい」と話す。復路の流れを決める大切な区間。自分の仕事を果たし、チームの目標を達成できるようにしたいという。
両親は今年1月の箱根駅伝に応援に来てくれたが、走る姿を見せることはできなかった。今回も来てくれるという。今度こそ2人の前で「最初で最後の箱根」を走りきるつもりだ。(三国治)
順大「総合3位めざす」
8年連続60回目の出場となる順天堂大。今年1月の箱根駅伝では「往路優勝」を目標に掲げたが、往路8位、復路13位で総合11位に沈み、上位10校に与えられるシード権を14秒差で逃した。今年10月の予選会を通過して箱根路の切符をつかんだ長門俊介監督は、今月12日の記者会見で「コツコツと練習を積み上げ、全体的な底上げが図れた。総合3位を目指す」と語った。
エースの塩尻選手は、2016年リオデジャネイロ五輪の陸上男子3000メートル障害に出場。箱根駅伝では前回まで3年連続でエース区間の2区を走ったが、前回は「周りのペースに乱され、後半で失速してしまった」と区間10位だった。最後の箱根路に向けて集団での長い距離の練習に力を入れ、10月の予選会では日本選手トップの2位に。今回も2区での起用が濃厚で、「区間賞を取ってチームを勢いづけたい」と話す。
長門監督が「もう1人のエース」と期待するのが山田攻(こう)選手(4年)。2年連続で山登りの5区を走り、前回は区間4位の力走を見せた。大学1年時は結果が出ずに苦しんだが、鉄棒を使ったトレーニングで体幹を鍛え、上り坂でも姿勢を崩さずに走れるようになった。今回も5区を念頭に、「名前のように山を攻めたい」と意気込みを語った。(松島研人)