迫る年の瀬。仙台市青葉区の「本郷だるま屋」は、大忙しだ。6畳ほどの店内に備わる作業場で、黙々と筆を走らせるのは10代目の本郷久孝さん(70)。
久孝さんと妻尚子さん(66)手作りの「松川だるま」は、伊達藩士だった松川豊之進(とよのしん)が作ったのがはじまりと伝えられる。
顔を囲む群青色は宮城の空と海を表し、品によっては宝船や福の神が描かれた縁起物。くりっとした両目が始めから入っているのは独眼だった伊達政宗に配慮したとも言われ、四方八方を見守る意味がある。
忙しくても、来客があれば手を止める2人。尚子さんが「何でもない話をして気持ちが前向きになってくれたら」と言えば、「買ってくれる人の安泰や健康を祈って、丁寧に目を入れます」と久孝さん。だるまも店も、心のよりどころとして愛され続けている。(平田瑛美)