インドネシアのジャワ島西部などで400人超が死亡した津波の被害から29日で1週間。引き金となった近くの火山は噴火警戒レベルが引き上げられ、新たな津波も心配される。被災後に孤立していた漁村には津波の爪痕が大きく残り、住民から不安の声が漏れた。
ジャワ島最西端のスムール地区は一部地域が津波による道路や橋の崩壊で孤立。被災地域全域にヘリで食料が届き始めたのは被災の4日後だった。
地区でも被害が大きかった漁村スンブルジャヤでは、船があちこちに打ち上げられ、大半の家屋が損壊。海岸から約500メートル内陸まで水浸し状態で、生活用品が泥まみれで散乱していた。米の配給が始まっていたが、漁師のベンディさん(53)は「とにかく米が足りない」と訴えた。
住民らは津波に襲われた時の恐怖が消えない。国立公園職員のロディアトゥル・アラウィヤさん(30)は22日夜、「ドドドド」という響きで親類が津波に気づき、寝ていた子供の手を引いて近くのイスラム礼拝所に駆け込んだ。家族は無事だったが、「隣人らが泣き叫んだり、転倒して傷を負ったりした光景がまぶたにこびりついた」といい、夜中に目覚める日が続く。夫のバイさん(30)は、スマホで気象情報を毎日何度もチェックする。
津波は火山島アナククラカタウが噴火し、山頂から島の南西部にかけての山体が崩壊して海に流れ込んだことで引き起こされたとされる。同島の噴火警戒レベルは27日、4段階で2番目に高い「警戒」に引き上げられた。当局が津波再発の可能性に触れると、村では「また津波が来る」とのうわさが広がった。立ち入り禁止も火口5キロ圏内に拡大。村の避難テントはもぬけの殻となって山間部に移され、火山島に近い二つの離島の住民の多くも、スマトラ島に自主避難した。
村で漁業と水産加工業を営むマルノさん(60)は「怖いけど、このままじゃ生活できない」と、漁業用のいかだを作るために、がれきから大木を集める。ただ12人の従業員が漁に出るのを怖がっており、再開のめどは立っていない。
国家防災庁は29日、津波の死者が431人、負傷者が7200人、行方不明者が15人になったと発表した。家屋1527棟が損壊し、4万6千人以上が避難している。(スンブルジャヤ村=野上英文)