冬の海でサーフィンかな? あれ、どうも様子が変ね――。海岸沿いを散歩中に海でおぼれていた人を見つけた主婦がいた。波打ち際まで流されたこのお年寄りを、主婦は服を着たまま海に入り、浜辺に引き揚げた。日常生活の中でのなにげない疑問へのこだわりが1人の命を救った。佐渡東署から人命救助の感謝状を贈られた。
この主婦は佐渡市梅津の井上恵子さん(63)。同署によると、井上さんは先月12日午後4時前、自宅近くを夫信一さん(62)、秋田犬のハチ(オス、8歳)と散歩していた。
井上さん夫妻によると、両津湾の方を眺めていたとき、海面の人影に気付いた。この季節でもウェットスーツを着て海に入る人はいるかもしれないが、胸まで海に入っていて様子がおかしい。しばらく、注視していた。やっぱり、おかしい。体重36キロの愛犬を信一さんに任せ、恵子さんは海岸まで数十メートルを走った。
岸の近くまで流されてきた女性は動かない。恵子さんはジーパンとスニーカーをはいたまま海に入り、女性の首のあたりを持ち、浜まで引き揚げた。女性は海水を吐いた。すぐに119番通報した。女性は低体温症のため動けない状態で病院に搬送されたが、一命を取り留めた。
信一さん、ハチとともに佐渡東署で中俣進署長から感謝状を受け取った。恵子さんは「あの状況だったら、だれでもすることです」とはにかみながら話していた。(古西洋)