日本の森に広く暮らすアカネズミとヒメネズミは、同じ地域にすんでいることも多い。よく似た両者が「共存」できる理由は何か? 福山大などのグループがその一端を解明した。
大阪湾にイルカの群れ じゃれるように船底くぐる
佐藤淳・福山大准教授や島田卓哉・森林総合研究所鳥獣生態研究室長たちのグループは、北海道幌加内町にある北海道大雨龍研究林で6~10月、両種のネズミを小さなわなで捕まえた。その中のネズミのふんに含まれるDNAを調べ、林内で餌として食べている植物を突き止めていった。
その結果、アカネズミは、春から秋に食べる餌の4分の1をブナ科のミズナラに依存し、特に栄養価の高いどんぐりが地上へ落ちる秋に利用が多くなっていた。多くのどんぐりは動物が嫌いなタンニンを含んでいるが、アカネズミはタンニンに耐性があって、どんぐりをたくさん食べられる体になっている。
一方、樹上でもよく活動するヒメネズミは、マツ科やニレ科、モクセイ科、カバノキ科、ブナ科など幅広い種類の高木を食べていた。どんぐりをめぐる競争を避けてアカネズミとすみ分けるため、餌を多様化させたと考えられるそうだ。
モクセイ科のヤチダモについては、アカネズミが8~10月に多く食べるのに、ヒメネズミが食べるのは6~8月と、季節的に食べ分けていることも分かった。アカネズミは種子を、ヒメネズミは花や未熟種子を好んで食べると思われた。このように同じ植物でも食べる時期をずらすことで、餌を奪い合わないようにしている例もあるようだ。
これらのネズミは主に夜間に活動するため、餌を食べる様子を直接観察することはなかなか難しい。従来は、死んだ個体の胃の中を調べたり、ふんの中身を顕微鏡で調べたりして何を食べているのか判断してきたが、わからないことも多かった。
近年、動植物のDNA配列の一部をデータベースに登録し、科や種の判別に用いる手法が普及し、国際的なデータの整備が進んでいる。今回のように、ふんの中に残されたDNAを解析して餌を明らかにするのもその応用で、今後、様々な動物の食性解明が進められそうだ。
この研究の論文は
https://doi.org/10.1093/jmammal/gyy063
に掲載されている。(米山正寛)