都心の南約160キロ、式根島(東京都新島村)近くの二酸化炭素が噴き出す海底で、筑波大の研究者らが「海洋酸性化」の影響を調査している。大気中の二酸化炭素濃度が上昇した影響で、海では酸性化が進んでおり、生態系への影響について研究者の関心が高まっている。
6月、記者が潜水調査に同行した。式根島南側、御釜湾近くの深さ10メートルほどの海底で、砂を巻き上げながら泡がぼこぼこと噴き出していた。手を近づけると熱く、あちこちから立ち上る泡は光るカーテンのようだ。地元のダイバーたちは「海中温泉」と呼ぶ。
筑波大下田臨海実験センターの和田茂樹助教(生物海洋学)によると、噴き出す気体は、ほぼ二酸化炭素。硫化水素はほとんど含まれない。海水の表面付近の水素イオン濃度指数(pH)は一般的に8・1程度で弱アルカリ性だが、式根島の噴出場所では酸性に近づき、pHが7前後。同じような環境はイタリアのイスキア島やパプアニューギニア、硫黄鳥島などでしか報告されておらず、なぜ二酸化炭素が噴き出すのか、詳しい理由はわかっていないという。
筑波大のメンバーは4年前から…