トランプ米大統領が中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱することを表明した。オバマ前政権が進めた「核なき世界」を覆し、トランプ政権が核軍縮にかかわる条約から撤退する初の事例になる。新たな核兵器開発競争にもつながりかねず、世界の核軍縮・不拡散体制を揺るがせている。(ワシントン=土佐茂生、香取啓介)
トランプ氏は昨年10月、「ロシアは長年、条約違反をしてきた。我々は合意を破棄し、離脱する」と記者団に語った。
INF全廃条約は、1970年代にソ連が欧州に照準を合わせた中距離弾道ミサイルを配備し始めたことに端を発する。米国は対抗して地上発射式巡航ミサイルを欧州に配備し、一時緊張が高まった。米ソ首脳は87年、中距離核戦力の全廃を目指す条約を結び、緊張緩和へと導いた。
しかし、オバマ政権は2014年、ロシアによる地上発射型の巡航ミサイル試験がINF全廃条約違反だと断定。条約を守るよう訴えた。これに対しトランプ政権は「オバマ大統領がなぜ交渉も離脱もしなかったのか分からない」と、条約離脱へかじを切った。
表向きの理由はロシアの違反だが、より強く意識するのが中国の存在だ。
条約に加わっていない中国はミ…